大阪大学皮膚科の金田眞理講師(本学会理事)らにより、日本人の結節硬化症の症状に関する論文が発表される。

大阪大学皮膚科の金田眞理医師(本学会理事)らにより、日本人の結節硬化症の症状に関する疫学的論文が発表される。

原論文題名: Trends in the prevalence of tuberous sclerosis complex manifestations: an epidemiological study of 166 Japanese patients.、著者: Wataya-Kaneda M, et al.、掲載雑誌(巻/号/頁/年): PLoS One 8:e63910, 2013

要約

結節性硬化症(TSC)はその原因遺伝子TSC1,TSC2の異常の結果、それらがつくる蛋白質hamartin、tuberinに異常が起こり、下流のmTORC1が活性化し、全身に過誤腫を呈すると同時に白斑、癲癇などの中枢神経病変を生ずる疾患である。TSCは古くから知られた疾患で、精神発達遅滞、てんかん、顔面の血管線維腫を三主徴と呼んだ時代もあった。しかしながら1990年代に入って、TSC2遺伝子、TSC1遺伝子が相次いで同定され、さらに2000年代に入って、TSC1,TSC2の遺伝子産物であるhamartin, tuberinがPI-3-Kinsase/Akt/mTOR シグナル伝達経路に関与していることが解明され、本症の分子病態が明らかになった。これら病態の解明と検査や診断技術の進歩の結果TSCはその患者数が著明に増加した。実際1956年に15万人に1人と言われたTSCの頻度が、1995年には1万5千人に1人、現在では6,000人に1人と増加している。この様に患者数が増えることによって、TSCの症状の頻度にも変化が認められる様になった。
そこで、大阪大学医学部付属病院皮膚科の遺伝病外来でフォロー中のTSC患者240人のうち臨床データがそろっている166人の患者についてその臨床症状の割合を調べ、従来の報告頻度と比較した。その結果、精神発達遅滞,癲癇、難治性癲癇、上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)及び白斑を伴う患者の割合は、それぞれ42%、63%、20%、2%、65%と、従来の報告に比して有意に低かった。一方顔面のAFやシャーグリンパッチなどの皮膚症状は各々、93%、83%と従来の報告に比して有意に高かった。また、皮膚症状を認めない患者はわずか1%であった。腎の血管筋脂肪腫(AML)、嚢腫や肺のリンパ脈管筋腫症(LAM)、自閉症の割合はそれぞれ61%、28% 、39%、21%で、従来の報告と頻度差は認めなかった。以上よりTSCでは精神発達遅滞や癲癇などの神経症状を呈する患者の割合が減少し、白斑以外の皮膚症状を持つ患者が増加しているのがわかった。腎、肺病変や自閉症の割合が従来の報告と変わらないのは、これらの症状が皮膚や神経症状に比して、最近注目をされてきたものであるためと思われた。
これらの変化の原因を検討するため、年齢別の症状の頻度を調べた。癲癇や精神発達遅滞、SENなどの精神神経症状や白斑は年齢の増加に伴ってその割合が低下する。AFやシャーグリンパッチなどの皮膚症状は年齢に伴ってその割合が増加する症状である。これらの結果を考え合わせると、遺伝子検査をはじめとする、種々の診断技術の向上に伴って、精神神経症状のない患者が思春期以降になって皮膚症状や腎、肺症状で初めてTSCと診断されるケースが増加していると考えられた。これらの患者さんにとっては、予後を左右する因子として腎のAMLや肺のLAMが重要になってくる。また女性では子宮筋腫の頻度がやや高く、これらの患者さんに関しては子宮のPEComaにも注意を払う必要がある事がわかった。

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