理事長挨拶

理事長挨拶

 新型コロナウィルス感染症が日本で最初に発見されてから、すでに1年半が経過しました。しかしこの感染症は猛威を振るい続け、収束のめどは全くたっていません。それどころか、9月10現在の新型コロナウィルス重症患者確保病床使用率は東京97%、神奈川91%と逼迫しており、今までの緊急事態宣言発令下の中で、今回が最も危機的な状況かもしれません。今年7月からの「第5波」においては、小児の感染は「第4波」の4倍以上で、小児への感染が急速に拡大しています。また米国における大規模な疫学研究では、精神発達遅滞を有する若年者は、新型コロナウィルス感染症による重症化率が健常人に比べ3倍高いことが示されました。この数値はいわゆる「デルタ株」の蔓延に伴い、今後さらに増加すると予想されています。加えて現在本邦では、12歳未満の小児は、新型コロナウィルスワクチンの対象外となっています。これらより精神発達遅滞を有する小児TSC患者さんのご家族は、とても不安な毎日を過ごされていると推察いたします。

 日本結節性硬化症学会では、このような患者さんに対するオンライン診療を含めた遠隔診療を推奨し、加えて患者レジストリシステムを広く普及させ、連携診療を推進しております。現在、結節性硬化症レジストリシステム(JTSRIM)には約100名の医師が登録し、患者さんのデータを集積しています。集積されたデータが、将来のTSC全体像の把握や治療介入時期の決定に、大きく貢献すると考えます。本システムは医師のみならず、登録した患者さんもご自身のデータや経過を閲覧できます。本システムの開始から9ヵ月が経過したことを受け、9月7日に行われた本学会2021年度第2回理事会において、システムの運用に対する意見交換が行われました。JTSRIMが担当医や患者さんにとって、少しでも使い勝手のよい、長期継続可能なシステムになるよう、定期的に改善、改良を行って参ります。

 現在本邦では、TSCの診断基準及び診療ガイドライン(改訂版)、TSC-AML診療ガイドライン、TSC-SEGA診療ガイドラインが刊行されており、TSCに伴うてんかんに対する診療ガイドラインが現在作成中です。また2016年に刊行されたTSC-AML診療ガイドラインは、今年8月から改訂作業を開始しました。このようなTSC随伴病変に対する各種診療ガイドラインの充実により、地域間におけるTSC診療のレベル格差を是正いたします。

 順天堂大学呼吸器内科 瀬山会長のもと、9月11日に開催された第9回日本結節性硬化症学会学術総会は成功裏に閉会しました。ご発表いただいた先生方に深くお礼申し上げます。次回2022年9月18日の第10回日本結節性硬化症学会学術総会は鳥取大学脳神経小児科 岡西会長のもと米子市で開催予定です。学術総会のテーマは「人生をみつめる診療育」となっております。次回からの新企画として、康本徳守記念結節性硬化症関連神経難病研究基金受給者の研究成果発表を行う予定です。どうぞご期待ください。また結節性硬化症を診療されている医療者の皆様、結節性硬化症を研究対象とされている研究者の皆様、ぜひ本学術総会でのご発表をお願い申し上げます。

 微力ながら本学会の更なる発展に誠心誠意努力いたします。皆様のご支援、ご協力をお願い申し上げます。

2021年9月吉日

聖隷横浜病院

泌尿器科 部長

波多野孝史