理事長挨拶

理事長挨拶

 中国武漢を起源と推測される新型コロナウィルス感染症の世界的なパンデミックに、私たちは1年以上翻弄されています。当初はWHOの専門家でさえ、ここまでの事態になるとは予想していなかったことでしょう。この感染症の流行を機に、私たちの日常生活や働き方は一変しました。しかし人類の歴史を振り返ると、未知のウィルスによって人間の生活や社会が大きく変化するのは今回が初めてではありません。人類はペストやスペイン風邪の流行に耐え、ワクチンや治療法の開発によりこれらのウィルスを克服してきました。

 今回の新型コロナウィルス感染症の世界的な流行により、デジタルトランスフォーメーションが一気に加速し、人々の行動は内向的に、生活は集中型から分散型へ大きく変化しています。これらにより今までの常識は大きく様変わりし、新たな技術や産業が起こり、政治体制や国際情勢を含めた世界的な変化へと進んでいます。現在、新型コロナウィルス感染症の災禍の中で、人類は次世代への大きなイノベーションを模索している時と考えます。

 我が国の新型コロナウィルス感染症の感染者数および死亡者数は、欧米諸国に比較して極めて少ないですが、2020年、2021年と2度の緊急事態宣言の発令により、外食や不要、不急の外出が制限され、国民に大きな負担を強いることになりました。結節性硬化症患者さんやご家族の方は、一般国民以上に日常生活や診療に対する不安やストレスに苛まれています。現在、私たちの喫緊のビジョンは新型コロナウィルス感染症蔓延下における適切な結節性硬化症診療体系の構築です。

 本学会は、金沢医科大学新井田理事および聖隷浜松病院藤本理事のご尽力により、昨年12月より医療の質を高めるための日本人レジストリシステム(JTSRIM)を構築しました。現在症例登録およびデータ入力が行われています。このシステムは患者および医療者の記録を双方向から共有できます。そのため対面診療のみならず、新型コロナウィルス感染症蔓延時や自然災害時におけるオンライン診療や電話診療時においても極めて有用な情報共有手段となります。私たちは結節性硬化症診療に従事する医療者に本システムへの参加を積極的に呼びかけ、このシステムが広く一般的に普及するよう啓発して参ります。

 加えて本学会では、今年度より結節性硬化症診療連携連絡協議会を立ち上げ、JTSRIMを活用した多施設間の連携診療を推進し、結節性硬化症に対するオンライン診療も拡充いたします。

 腎血管筋脂肪腫に関しては、「結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫に対して医療費適正化を目指した凍結療法の安全性と有用性の検討」という臨床研究が、九州大学泌尿器科江藤先生を中心に全国規模で進められています。本学会はこの研究に対しても積極的に協力いたします。

 以上、私の考えを綴りましたが、会員の皆様からのご意見、ご要望を仰ぎ、本学会のさらなる発展に誠心誠意努力いたします。皆様のご支援、ご協力をお願い申し上げます。

 また結節性硬化症診療に従事されている医療関係者の皆様、結節性硬化症をテーマにされている研究者の皆様、本学会への参加を心から歓迎いたします。まずは今年9月11日(土)に順天堂大学瀬山理事が会長として開催予定の第9回日本結節性硬化症学会学術総会をのぞいてみてください。

2021年4月吉日

聖隷横浜病院

泌尿器科 部長

波多野孝史