病態検索と管理の診療推奨事項

※あくまで米国の推奨事項の現状であり、日本においては現在検討中です。

(1)新規にTSCと診断された症例についての推奨

1-1)全ての年齢の新規症例についての推奨

患者の近親3世代の家族歴(兄弟姉妹、両親、子供あるいは祖父母)について評価する。家族全体についてのカウンセリングのために、あるいはTSC診断が 不確定の場合には、遺伝子検査を勧める。

(訳注) 日本と米国の遺伝子検査利用状況は異なります。遺伝子検査にはデメリットもあります。検査の前にはカウンセリングを行う必要があります。

脳MRI検査を行い、上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)、上衣下結節(SEN)や皮質結節の発生を調べる。

TSC関連神経精神症状(TAND)を評価する。TANDとは、TSCに頻繁に認められる、社会行動的、認知的、神経精神的特徴を示す、新しい専門用語 である。

ベースラインの通常脳波検査(EEG)を実施する。脳波に異常が見られる場合、とりわけTANDの特徴も呈している場合は、24時間ビデオEEG検査を 行い、軽微な発作を見つける。

腹部のMRI検査を行い、血管筋脂肪腫(AML)と嚢胞の発症を評価する。腎機能(糸球体濾過率=GFR)と血圧を測定する。

TSCに頻繁に発生する皮膚と歯の異常を調べるため、皮膚科的および歯科的な臨床検査を実施する。

心拍動異常を調べるため、通常の心電図検査(ECG)を実施する。

心機能と心横紋筋腫の発生を調べるため、心エコー検査を実施する(特に3歳未満の子供)。

視覚障害や網膜の異常を調べるため、眼科医の診察を受ける。

1-2)新規の幼児・小児症例(3歳未満)についての追加推奨項目

3歳未満の子供の親や介護者には、点頭てんかんの見分け方や、点頭てんかんの疑いがある時の対処法を伝える。

1-3)新規の成人症例(18歳以上)についての追加推奨項目

リンパ脈管筋腫症(LAM)の発生を調べるため、18歳以上の成人女性患者には、ベースラインの肺機能検査および高解像度胸部CT(HRCT)検査を実 施する。18歳未満の女性と成人男性については、LAMの疑いが強い臨床症状(原因不明の慢性の咳、胸痛、呼吸困難など)がある場合にのみLAMの検査を 行う。

(2)既にTSCと診断された症例についての推奨

2-1)全ての年齢の患者についての推奨

子供を作ることが可能な年齢になる患者には、遺伝子検査(いままでに受けていない場合)や遺伝カウンセリングを提案する。

(訳注) 遺伝子検査のメリット、デメリットをしっかり把握する事が必要です。日本では通常、出生前診断は行うことはできません。

てんかん発作がある、または疑われる場合は、脳波検査(EEG)を行う。EEG検査を行う期間や頻度は、決められた年齢や間隔よりは、臨床的な必要性で 決定するべきである。

幼児期の点頭てんかん以外のてんかん発作については、他の種類のてんかんと同様に治療する。通常使用されている抗てんかん薬が効かない発作を示す患者に は、ケトン産生/低炭水化物食療法、迷走神経刺激療法、てんかん外科手術などが有効である。

診察毎にTANDの症状についてスクリーニングを実施する。考慮すべき所見がある場合は、より詳細な評価と治療を早急に進める。加えて、行動、認知、精 神神経症状の専門的評価を、主要な各発達段階(0-3歳、3-6歳、6-9歳、12-16歳、12-16歳、18-25歳)において、少なくとも1回は行 うべきである。TANDの症状については、個々の患者に特徴的なTANDのプロファイルに対して個別に設定される、薬物療法と非薬物的措置の複合的な方策 により治療するべきである。

無症候性の患者であっても、脳MRI検査を25歳まで1-3年に1回行い、SEGAの発生や進展を評価する。SEGAが大きい、あるいは成長している場 合は、MRI検査の頻度を増やすべきである。幼児期にSEGAがあった成人患者は、定期的なMRI検査が継続して必要かも知れない。SEGAが水頭症様の 症状を起こしてきた場合は、可能であれば、SEGAの外科的切除が治療適応となる。無症候性で成長しているSEGAは外科手術やmTOR阻害薬で治療可能 である。

1-3年に1回、腹部のMRI検査を行い、腎臓および腎臓以外のTSCの症状の進行を評価する。

最低でも毎年、腎機能および血圧を調べる。

(訳注) 腎機能が正常だからといって腫瘍が小さい、あるいは無いとは限りません。

急性出血を伴うAMLは、塞栓術とコルチコステロイド投与により治療する。急性出血を伴わない直径3㎝以上のAMLは、成長の持続と出血を避けるため、 第一選択としてmTOR阻害薬による治療を行う。塞栓術、コルチコステロイドや腎臓の部分切除は適切な第2選択治療である。

(訳注) 日本では現在、mTOR阻害薬による治療、塞栓術、コルチコステロイドや腎臓の部分切除等、腎腫瘍に対する治療指針を検討中であり、これと全く同等のもの になるとは限りません。

毎年、新しい病変の発生や進展を調べるため、皮膚を調べる。深刻な、あるいは問題のある病変は、外科的処置またはレーザー治療、あるいはmTOR阻害薬 の局所投与により治療可能かも知れない。

TSCに頻繁に見られる歯の症状の識別と管理について経験のある歯科医による検査を年2回行う。

過去に網膜の病変が見つかった患者、あるいは新たに視覚障害や懸念が生じた患者については、詳細な眼球と視覚の検査を毎年実施する。ビガバトリンを服用 している患者も定期的な眼科検診を受けるべきである。

過去に心横紋筋腫が見つかっている患者では、心横紋筋腫が退縮する、あるいは増大しなくなるまで、1-3年に1回心エコー検査を行う。

心臓の伝導障害を調べるため、3-5年に1回ECG検査を行う。

2-2)幼児と小児(3歳未満)についての推奨

幼児点頭てんかんに対しては、第一選択治療としてビガバトリンを投与する。ビガバトリン治療が効果を発揮しなかった場合は、副腎皮質刺激ホルモン (ACTH)投与が第2選択治療として使用可能である。

(訳注)日本ではビガバトリンの使用に厳しい制限があり、数少ない登録済みの病院のみで実施されている現況です。

2-3)成人(18歳以上)についての推奨

LAMの症状について、労作性呼吸困難や息切れなどを含め、通院毎に臨床的なスクリーニングを行う。

(訳注) ただし、早期にこれらの症状が現れない症例も多く見られます。

LAMのリスクがあるが無症候性の患者(18歳以上の女性全員、および、疑いの高い臨床症状を呈する全ての年齢の男性と女性)については、5-10年に 1回HRCT検査を実施する。過去にLAMが見つかっている患者については、進行をモニターするため、より頻繁に(2-3年に1回)HRCT検査を行う。

LAMの既往のある患者、あるいはLAMのリスクがあるものの無症候性であったが新たに呼吸困難や懸念を訴えた患者については、毎年肺機能検査を行う。

(米国TSAのホームページの情報を和訳・一部訳注を加筆)