TSCとは?

 結節性硬化症(TSC)は遺伝性の疾患で、主に脳、目、心臓、腎臓、皮膚、肺といった様々な臓器に良性の腫瘍が出来るという特徴があります。 Tuberous sclerosis (TS)ともtuberous sclerosis complex (TSC)ともよばれます。医学的文献ではトゥレーット症候群(Tourette’s syndrome)と区別するためにTSCという略称を使っていま す。

この病気は非常に重症の人もいれば、診断されずに過ごしてしまうほど軽症の人もいます。TSC患者の中には、発達障害(0-6歳)、知的障害(IQが測定できる年齢)や自閉症を伴った人もいます。しかし、同じTSC患者でも、自立して生活し、健康的な人生を送り、医師、弁護士、教育者や研究者などの専門職についている人たちもたくさんいます。

*発達障害と知的障害の違いについて:医師や医療関係者は、小さな子供に“発達障害”という表現を使うことがありますが、これは知的障害の診断を受けるには若すぎる0-6歳の子供に限定して使われる表現です。なぜなら、IQテストを受け、知能が標準を大きく下回ることで“知的障害”の診断を行いますが、0-6歳の子供はじっと座って集中することが必要となるIQテストを受けることが困難です。
子供に様々な分野で発達の遅れがある場合、正式なIQテストが受けられる年齢になるまで、専門家は“発達障害”という表現を使うかもしれません。“発達障害”と言われたからと言って、IQテストを受けた時に必ず“知的障害”と診断されるとは限りません。

(訳注) 「発達障害(原文中 developmental delay)」という言葉は、国により、人により、さまざまに使われています。日本では、広義には「知的機能のどれかひとつ、あるいは複数について発達上の問題があること」を指し、狭義には主として「自閉症スペクトラム(アスペルガー障害を含む)、注意欠陥・多動性障害(AD/HD)、学習障害(この用語も国により定義が異なります:日本では読字障害、算数障害など)」を指します。日本における「発達障害」の概念は、アスペルガー障害やAD/HDなど、もともと知的障害(IQの低い状態)と関係のない状態を主役としているものです。

TSC患者の人数はどの位でしょうか?

世界中のどこかで、少なくとも毎日2人の赤ちゃんがTSCを持って生まれてきます。現在、出生時のTSCの発生率は6000人に1人と言われています。世界中で100万人に上るTSC患者がおり、そのうちアメリカには大体50,000人のTSC患者がいます。また症状が多岐に渡っていることや軽症な人も多いことから、診断されていないケースも多いのが現状です。TSCはALS(筋委縮性側索硬化症またはLou Gehrig’s病)と同じくらいの頻度で発症していますが、一般社会においてほとんどその病名は知られていません。

どのようにしてTSCを発症するのですか?

TSCは遺伝または遺伝子の突然変異で発症します。もし父親か母親のどちらかがTSCであれば、子供へ遺伝する確率は50%となります。現時点では、遺伝によりTSCが発症している人は全体の3分の1だということがわかっています。残りの3分の2は突然変異による発症だと考えられています。なぜこのような突然変異が起こるのか、その原因は未だ解明されていません。

もし親が軽症のTSCの場合、子供も軽症でしょうか?

親のTSCが軽症でも、子供にはもっと重い症状が出る可能性もあります。実際、親が非常に軽症な場合、子供が重い症状でTSCと診断され、初めて自分自身がTSCであったということを知る人もいます。

TSCはどのように診断するのですか?

現在TSCの診断をするにあたって、次の検査を行っています:脳のMRIまたはCTスキャン、腎臓エコー、心エコー、心電図(EKG)、眼底検査、ウッドランプによる皮膚診断。また、遺伝子診断といったツールを医師や遺伝子カウンセラーが用いることもあります。現在、多くの遺伝病で遺伝子検査を利用できます。遺伝子検査には主に3つの目的があります:1)臨床的症状による診断の確証のため;2)本人を検査することにより、同じ病気のリスクを持つ家族の検査が容易になるため; 3)出生前診断。

(訳注)日本においては、米国ほど遺伝子検査が盛んに行われているわけではありません。特に、3)の出生前診断については、ダウン症候群以外の出生前診断は行われていないのが現状です。

TSCはどの遺伝子が原因なのですか?

TSCを引き起こす二つの原因遺伝子が同定されています。二つのうち一つでも遺伝子が壊れているとTSCを発症します。TSC1遺伝子は第9染色体にあり、ハマルチン遺伝子とも言います。もう一つの遺伝子であるTSC2は、第16染色体にあり、チュベリン遺伝子とも言います。研究者たちはこの二つの遺伝子がどのような役割を担っているか、またこの遺伝子の欠陥がどのようにTSCを引き起こすのかを突き止めようとしています。

なぜいくつもの臓器がTSCによる影響を受けるのでしょうか?

TSC1とTSC2遺伝子はいずれも体の中で腫瘍の増殖・成長を抑制する働きがあると言われています。どちらか一つでも遺伝子に欠陥があると、腫瘍の形成や増殖が抑制されずTSCを発症します。また、二つの遺伝子は早期における胎児の脳や皮膚の形成に関わっています。

腫瘍とは「がん」ですか?

TSCの腫瘍は基本的にがんではありません(良性)が、様々な重い症状を起こす原因となります。脳内で大きくなった腫瘍は、脳室で脳脊髄液の流れを低下させることがあります。これが原因となって、行動面での変化、吐き気、頭痛やその他の数々の症状を引き起す可能性があります。

また心臓の腫瘍は、通常生まれた時に一番大きく、年齢と共に縮小します。この心臓の腫瘍は横紋筋腫(おうもんきんしゅ)と呼ばれ、出生時に血流が悪くなったり、不整脈の原因になることがあります。

眼の腫瘍は稀ですが、過度に大きくなり、視覚の邪魔になると問題になります。

腎臓の腫瘍(AML)は、腎臓が正常に機能できなくなるほど大きくなってしまう場合があります。昔は、患者が腎不全を起こすまで放置されていました。今日は、医師はもっと積極的なアプローチを取ります。大きくなりすぎて正常な腎組織に影響してしまう前に個々の腫瘍を外科的に切除します。まれに(2%以下)TSC患者が腎臓に悪性腫瘍(がんに類似)を患うことがあります。

TSCの人の平均寿命はどのくらいですか?

多くのTSC患者は平均寿命を全うします。しかし腎臓や脳といった臓器で合併症が起こった場合、放置しておくと重症化したり、死に至ることもあります。このようなことが起こらないように、TSC患者は、合併症の可能性など生涯に渡って医師にモニターしてもらうことが大事です。最近の研究成果や新しい医療方法により、TSCの人はよりよい医療ケアを受けることができるようになりました。

治らない病気ですが、何ができますか?

発達の遅れを克服する上で、早期介入が重要な鍵となってきます。研究成果により、新しくよりよい医療の選択肢が出てきました。外科的手術で腫瘍を摘出したり、腫瘍の成長を止めることは、臓器の機能を保つ手助けをします。また最新技術で、脳のどの部分がてんかん発作の原因となっているか特定できるようになり、てんかん発作をコントロールするための新しい医療方法も編み出されています。

2010年の秋、米国FDA(食品医薬品局)はTSC、特にSEGA(上衣下巨細胞性星細胞腫)の初めての治療薬を承認しました。現在進行中の臨床試験を通じて、将来新しい医療方法へとつながることでしょう。
私たちは毎日、新しい、よりよい治療法に一歩ずつ近づいているのです。

(米国Tuberous Sclerosis Allianceのホームページより和訳転載、一部改変)